リハビリテーション看護(改訂第3版)

障害のある人の可能性とともに歩む

  • 編集

    酒井郁子 金城利雄 深堀浩樹

  • ISBN

    978-4-524-24629-8

  • 発行年月

    2021年1月

  • 判型

    B5

  • ページ数

    416

  • 定価

    本体2,700円 + 税

正誤表・リーフレット

  • 本書の特徴
  • 改訂のポイント
  • 序文
  • 主要目次
  • 改訂のポイント
  • 推薦のことば
  • 採用者のこえ
  • その他の情報

序文

はじめに<br />
<br />
 本書初版は、2010年に出版されました。そして東日本大震災をはさんで2015年に第2版を刊行し、初版から10年が経過した2020年11月に第3版の校了を迎えています。2015年からの5年間で世界は大きく変貌を遂げました。まず、本書第2版の完成間近であった2015年9月には、国連サミットで持続可能な開発のための2030アジェンダが採択されました。これを受けて、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成が位置づけられました。そして、2017年にWHOはリハビリテーションの定義を「リハビリテーションは、環境との相互作用における健康状態の個人の機能の最適化と障害を軽減するために設計された介入のセットである。急性慢性の疾患、障害、外傷、妊娠、老化、ストレス、先天異常などの状況を含んだあらゆる健康状態の人に対して、生きて働き、学び、潜在能力を最大限に引き出すための活動である」と改定したのです。<br />
 本書はこの大きな変革の動きを受けて、内容を更新しています。改訂作業開始から3年近くかかりましたが、この間に日本は「平成」から「令和」に代わり、そしてCOVID-19のパンデミックで世界の様相は一変しました。リハビリテーション提供のありよう、長期ケア施設での生活支援のありよう、そして住み慣れた地域での暮らしのありようが、感染予防と感染制御に圧倒され、障害のある人たちは活動・参加の場や機会の縮小という脅威にさらされています。<br />
 今こそ、あらゆる健康状態の人に対して、生きて働き、学び、潜在能力を最大限に引き出すための活動である、リハビリテーションとリハビリテーション看護は、その価値を最大限に発揮するときです。看護学を学び、近い将来に臨床の現場でケアを提供する学生の皆さんには、本書で論述されているリハビリテーション看護の価値と哲学、そしてそれに基づいた効果的な方法とシステムを理解し、看護実践に活用していただきたいと思っています。<br />
 第3版で大きく改訂したのは、I章・II章・III章です。リハビリテーションとリハビリテーション看護の解説を、グローバルな変化に対応させました。これに伴い、急性期のリハビリテーション看護および生活期のリハビリテーション看護と補装具などについて、具体的な看護の方法と評価を新しい知見に基づいて更新しています。また、2020年現在の研究状況を基に、遺伝や栄養とのかかわり、新たな手法などについてのコラムを設けました。次回の改訂では、これらのコラムの記載内容は本文で解説されていることと思います。次の新しい扉はもうそこにあります。<br />
 さあ、リハビリテーション看護の探究の旅に出かけましょう。<br />
<br />
2020年11月<br />
酒井郁子<br />
金城利雄<br />
深堀浩樹

主要目次

第I章 リハビリテーションとは<br />
 1 リハビリテーションの理念<br />
  A.リハビリテーションの哲学と目指すところ<br />
  B.リハビリテーションの定義<br />
  C.リハビリテーションの分類<br />
 2 リハビリテーションの歴史<br />
  A.概要<br />
  B.欧米のリハビリテーションの歴史<br />
  C.日本のリハビリテーションの歴史<br />
  D.日本のリハビリテーション看護の歴史<br />
 3 リハビリテーションにかかわる法律<br />
  A.法律の役割,法律を学ぶ意義<br />
  B.リハビリテーションにかかわる法律の概要<br />
  C.医療機関と法律<br />
  D.障害者福祉と法律<br />
  E.介護保険制度<br />
  F.障害年金と税<br />
 4 生活機能分類と生活機能障害の構造<br />
  A.国際生活機能分類(ICF)とは<br />
  B.国際生活機能分類の成り立ちとその経緯<br />
  C.生活機能および生活機能障害の構造と構成因子<br />
  D.ICFの使い方と活用の一例−ICFコアセット<br />
第II章 リハビリテーション医療に必要なチームアプローチ<br />
 1 リハビリテーションに必要なチームアプローチ<br />
  A.チームとは<br />
  B.チームアプローチを促進する体制<br />
  C.リハビリテーションチームメンバーに求められるもの<br />
 2 リハビリテーション医療に携わる専門職の役割・機能<br />
  A.リハビリテーション医療に携わる専門職種<br />
  B.専門職の役割と機能<br />
 3 リハビリテーション看護の専門性<br />
  A.保健師助産師看護師法からみたリハビリテーション看護の業務<br />
  B.リハビリテーション看護の機能と役割<br />
  C.リハビリテーション看護に携わる看護職に必要な看護実践能力<br />
  D.リハビリテーション看護の場と障害発症時の発達段階<br />
第III章 生活機能障害のある人とその家族の理解<br />
 1 障害とともに生きる技法<br />
  A.障害経験の多様性<br />
  B.脳卒中を生きる意味<br />
  C.社会の中で生きてゆく−共生へ<br />
 2 患者と家族が体験する障害の世界<br />
  A.健常者の文化から障害者の文化へ移行すること<br />
  B.マイノリティへの移行に寄り添う<br />
 3 障害とともに年をとる<br />
  A.「障害と加齢」をめぐる2つの仮説<br />
  B.「障害者の高齢化」に対して看護職に期待されること<br />
第IV章 リハビリテーション看護の展開に必要な概念と理論<br />
 1 リハビリテーションを必要とする人への看護の目的を定めるために<br />
  A.QOL<br />
  B.自立から自律へ<br />
  C.セルフケア<br />
  D.動機と主体性<br />
  E.自我発達<br />
 2 リハビリテーションを必要とする人との関係を構築するために<br />
  A.協働的パートナーシップ<br />
  B.相互作用と意味ある世界<br />
 3 リハビリテーションを必要とする人への看護を展開するために<br />
  A.動きやすい環境<br />
  B.日常生活活動(ADL)の構造<br />
  C.成人における学習と移行<br />
第V章 リハビリテーション看護の目的と方法<br />
 1 不動・低活動の予防(生命レベル)<br />
  A.不動・低活動がもたらす弊害<br />
  B.廃用症候群の諸症状<br />
  C.不動・低活動の予防<br />
 2 活動の促進(生活レベル)<br />
  A.活動の促進とADL<br />
  B.福祉用具および住環境整備の意義<br />
  C.活動の促進に向けたADL支援方法<br />
  D.活動促進時の安全管理<br />
 3 参加の促進(人生レベル)<br />
  A.国際生活機能分類(ICF)における「参加」の意味を理解する<br />
  B.障害者の社会参加における課題<br />
  C.障害のある患者の社会参加における看護師の役割を理解する<br />
第VI章 回復過程とリハビリテーション看護<br />
 1 急性期におけるリハビリテーション看護<br />
  A.急性期のリハビリテーションとは<br />
  B.急性期のリハビリテーションが行われる場とその特徴<br />
  C.急性期におけるリハビリテーション看護の目的と方法<br />
  D.急性期におけるリハビリテーション看護の評価<br />
 2 回復期におけるリハビリテーション看護<br />
  A.回復期のリハビリテーションとは<br />
  B.回復期のリハビリテーションが行われる場とその特徴<br />
  C.回復期におけるリハビリテーション看護の目的と方法<br />
  D.回復期におけるリハビリテーション看護の評価<br />
 3 生活期におけるリハビリテーション看護<br />
  A.生活期のリハビリテーションとは<br />
  B.生活期のリハビリテーションが行われる場とその特徴<br />
  C.生活期におけるリハビリテーション看護の目的と方法<br />
  D.生活期におけるリハビリテーション看護の評価<br />
第VII章 生活機能障害とリハビリテーション看護<br />
 1 運動機能障害のある人への看護−脳卒中の場合<br />
 1-1 運動機能障害<br />
  A.運動機能障害とは<br />
  B.運動機能障害のアセスメント<br />
 1-2 脳卒中<br />
  A.脳卒中とは<br />
  B.脳卒中による運動機能障害のある人への看護<br />
 2 高次脳機能障害のある人への看護<br />
  A.高次脳機能障害とは<br />
  B.高次脳機能障害のアセスメント<br />
  C.高次脳機能障害のある人への看護<br />
 3 運動機能障害のある人への看護−脊髄損傷の場合<br />
  A.脊髄損傷とは<br />
  B.脊髄損傷のアセスメント<br />
  C.脊髄損傷による運動機能障害のある人への看護<br />
 4 運動機能障害のある人への看護−大腿骨近位部骨折の場合<br />
  A.日本における運動器疾患の問題<br />
  B.大腿骨近位部骨折とは<br />
  C.大腿骨近位部骨折のリハビリテーション看護<br />
 5 摂食嚥下障害のある人への看護<br />
  A.摂食嚥下障害とは<br />
  B.摂食嚥下障害のアセスメント<br />
  C.摂食嚥下障害のある人への看護<br />
 6 排泄機能障害のある人への看護<br />
 6-1 排尿障害<br />
  A.排尿障害とは<br />
  B.排尿障害のアセスメント<br />
  C.排尿障害のある人への看護<br />
 6-2 排便障害<br />
  A.排便障害とは<br />
  B.排便障害のアセスメント<br />
  C.排便障害のある人への看護<br />
 7 心身障害を有して生まれ成人した人への看護<br />
 7-1 障害を有して成人した人への看護<br />
  A.障害を有する子ども<br />
  B.障害を有して成人した人のリハビリテーションと生活支援<br />
  C.障害を有して成人した人の生活の質(QOL)・意思決定<br />
 7-2 重症心身障害を有して成人した人への看護<br />
  A.重症心身障害児・者をとりまく現状<br />
  B.重症心身障害を有して成人した人への看護<br />
第VIII章 リハビリテーション看護における倫理的諸問題<br />
 1 リハビリテーション看護における倫理的諸問題<br />
  A.看護の倫理とリハビリテーションにおける看護の専門性<br />
  B.リハビリテーション看護における倫理的葛藤および倫理的問題<br />
第IX章 リハビリテーション看護のシステム化と発展を目指して<br />
 1 療養の場の移行に伴う看護の継続<br />
  A.リハビリテーションを行う場<br />
  B.場の移行に伴う看護の継続<br />
  C.看護の継続の評価<br />
 2 リハビリテーション看護の質改善<br />
  A.エビデンスを活用したリハビリテーション看護の質改善<br />
  B.リハビリテーション看護におけるEBP<br />
  C.エビデンスの実装(IOWAモデルを例に)<br />
 3 地域包括ケアシステムにおけるリハビリテーション<br />
  A.地域社会で生きていくためのリハビリテーション−CBRについて<br />
  B.地域包括ケアシステムの概念とその発展<br />
  C.地域包括ケアをリハビリテーション的なシステムにするために<br />
 4 地域包括ケアシステムにおけるリハビリテーション看護<br />
  A.地域包括ケアシステムにおけるリハビリテーション看護とは<br />
  B.リハビリテーションにかかわるサービスと介護報酬<br />
  C.自宅で暮らす患者へのリハビリテーション看護とその評価<br />
 5 リハビリテーション看護の現状と課題<br />
  A.リハビリテーション看護教育の現状と課題<br />
  B.これからのリハビリテーション看護<br />
付録<br />
 付録1 身体障害者障害程度等級表<br />
 付録2 評価スケール<br />
 付録3 身体の関節運動と可動域<br />
 付録4 徒手筋力テスト<br />
 付録5 自助具・補助具一覧<br />
索引