- 2023年改訂
成人看護学 慢性期看護(改訂第4版)
-
編集
鈴木久美 籏持知恵子 佐藤直美
- ISBN
978-4-524-23436-3
-
発行年月
2023年2月
- 判型
B5
- ページ数
552
- 定価
本体3,400円 + 税
序文
本書『看護学テキストNiCE 成人看護学 慢性期看護—病気とともに生活する人を支える』の初版は,看護実践能力の強化をめざして改正(第4 次改正)された看護基礎教育の指定規則の内容に即し,これからの看護基礎教育にふさわしい成人看護学テキストの一つとして2010 年に刊行されました.学生の皆様が,慢性疾患とともに生活する人を理解し,その人を支える慢性期看護の考え方を深め,臨地実習で看護実践を展開していく際に必要な基礎知識や技術,看護に対する姿勢を身につけるための道しるべとなるよう努めました.<br>
本書は初版の刊行以降,4〜5 年ごとに改訂してきましたが,2019年に改訂第3版が刊行されたのち,新型コロナウイルス感染症のパンデミックという未曽有の出来事が起こり,私たちの日常生活は一変しました.また,頻発している自然災害,加速する少子高齢化に伴う人口減少や疾病構造の急激な変化,増加しつづける生活習慣病を有する患者,分子生物学の飛躍的進歩に伴うゲノム医療や新薬開発,人工知能や情報通信技術の導入の急速化,2035 年問題を見据えての健康先進国をめざした保健医療福祉システムの改革など,われわれを取り巻く社会や医療の環境は大きく変化し続けています.このような絶え間ない変化のなかで,患者が求める医療ニーズの多様性や療養の場の拡大に対応すべく高い看護実践能力が求められています.こうした状況に鑑みて看護基礎教育の指定規則が改正され(第5次改正),2022年度より新しいカリキュラムでの教育が始まりました.そこでこのたび,病気とともに生活する人をより深く理解し,科学的根拠に基づいた看護実践を展開するために,最新の統計や関係法規,診療ガイドライン等の知見を盛り込んだ改訂第4版を刊行することにいたしました.<br>
改訂第4 版はこれまでの構成を踏襲しつつ,第T章では臨床現場の状況に合わせて療養移行や外来での継続看護の実際と,慢性疾患を有する人が災害に遭遇したときの看護について新たに項目を立てて充実させました.また,第U章では最新情報へのアップデートを図りました.第V章では治療・療養行動にかかわる概念や理論の理解が進むように,解説する概念や理論の順序性を検討したうえで事例を増やし,新たに「コンコーダンス」の概念の解説を加えました.さらに,第W章と第X章では,最新の統計や保健医療福祉制度の改正に則した修正を加え,診療ガイドラインの改訂に合わせて疾患・治療および看護の内容を見直し,第Y章では学生が実習で受け持つことが多い事例を追加いたしました.<br>
本書を多くの学生の皆様や看護教育に携わる教員の方々にご活用いただき,時代のニーズや臨床現場に適したより充実したテキストとなるよう,忌憚ないご意見をいただけますと幸いです.<br>
<br>
2023年1月<br>
鈴木 久美<br>
籏持知恵子<br>
佐藤 直美<br>
主要目次
第T章 慢性期看護とは <br>
1 慢性疾患の特徴 <br>
A.慢性疾患のとらえ方 <br>
B.慢性疾患の種類と経過 <br>
C.慢性疾患の動向と社会の変化 <br>
2 慢性疾患における治療の特徴 <br>
A.慢性疾患における治療の考え方 <br>
B.慢性疾患における治療法とその特徴 <br>
3 慢性疾患を有する人をとりまく療養環境の特徴 <br>
A.療養環境の変化と看護師の役割拡大 <br>
B.病院・地域・在宅との連携 <br>
C.療養移行,継続看護の実際 <br>
D.医療費の問題 <br>
4 慢性疾患を有する人に対する看護の役割 <br>
A.慢性疾患を有する人が直面するインフォームド・コンセントと意思決定を支える援助 <br>
B.慢性疾患を有する人の病気の受け入れの過程を支える援助 <br>
C.慢性疾患を有する人のセルフマネジメントを促すための継続的支援 <br>
コラム エンパワメントアプローチ <br>
D.慢性疾患を有する人の人権擁護および看護実践における倫理的問題へのかかわり <br>
5 慢性疾患を有する人にかかわる専門職とチーム医療 <br>
A.チーム医療とは <br>
B.チーム医療の実践 <br>
6 災害時における慢性疾患を有する人の看護 <br>
A.災害が慢性疾患を有する人に及ぼす影響 <br>
B.災害発生時の慢性疾患を有する人への看護 <br>
<br>
第U章 慢性疾患を有する人とその家族の理解 <br>
1 慢性疾患を有する人の身体的特徴 <br>
A.加齢に伴う身体機能の変化 <br>
B.慢性疾患および治療が及ぼす身体機能への影響 <br>
C.成人期における加齢,慢性疾患,治療が及ぼす身体的影響について <br>
2 慢性疾患を有する人の心理的特徴 <br>
A.成人の発達課題 <br>
B.慢性疾患および治療が及ぼす心理過程の特徴 <br>
1●難病患者の心理過程 <br>
2●がん患者の心理過程 <br>
3●障害受容過程モデルによる心理過程 <br>
C.慢性疾患および治療が及ぼす自己概念への影響 <br>
コラム 病気におけるスティグマ(stigma)って何だろう <br>
3 慢性疾患を有する人の生活および社会的特徴 <br>
A.役割とは <br>
B.慢性疾患および治療が及ぼす役割の変化 <br>
C.慢性疾患および治療とセクシュアリティ <br>
4 慢性疾患を有する人を支える家族の特徴 <br>
A.患者と家族をとりまく問題 <br>
B.家族に必要なケア <br>
<br>
第V章 慢性疾患を有する人とその家族への援助・支援の基本 <br>
1 治療・療養行動にかかわる主な概念・理論 <br>
はじめに  <br>
A.セルフケア  <br>
B.セルフマネジメント <br>
C.自己効力感   <br>
D.健康信念  <br>
E.トランスセオレティカルモデル  <br>
F.アドヒアランス   <br>
G.病みの軌跡  <br>
コラム トランジションセオリー <br>
2 治療・療養を促進する支援 <br>
A.セルフマネジメント能力を高める支援  <br>
B.成人患者への教育的アプローチ <br>
C.相談技術   <br>
3 社会資源の活用 <br>
A.日本の社会保障制度 <br>
B.保健医療福祉制度 <br>
C.事例でみる難病患者の社会資源の活用  <br>
D.サポートグループやセルフヘルプグループ <br>
第W章 慢性疾患の主な治療法と治療を受ける患者の看護 <br>
1 インスリン療法を受ける患者の援助 <br>
A.インスリン療法の基礎知識 <br>
B.インスリン療法を受ける患者の特徴 <br>
C.インスリン療法を受ける患者への援助 <br>
コラム インスリン抵抗性 <br>
2 人工透析を受ける患者の援助 <br>
A.人工透析の基礎知識 <br>
B.人工透析を受ける患者の特徴 <br>
C.人工透析を受ける患者への援助 <br>
3 ペースメーカーを装着している患者の援助 <br>
A.ペースメーカーの基礎知識 <br>
コラム 植込み型心臓デバイスの種類 <br>
B.ペースメーカーを装着している患者の特徴 <br>
C.ペースメーカーを装着している患者への援助 <br>
コラム 心臓デバイスチーム <br>
4 ステロイド療法を受ける患者の援助 <br>
A.ステロイド療法の基礎知識 <br>
B.ステロイド療法を受ける患者の特徴 <br>
コラム ステロイド薬使用にあたり注意が必要なケース <br>
C.ステロイド療法を受ける患者への援助 <br>
5 化学療法を受ける患者の援助 <br>
A.化学療法の基礎知識 <br>
B.化学療法を受ける患者の特徴 <br>
C.化学療法を受ける患者への援助 <br>
コラム 手足症候群 <br>
6 放射線療法を受ける患者の援助 <br>
A.放射線療法の基礎知識 <br>
B.放射線療法を受ける患者の特徴 <br>
C.放射線療法を受ける患者への援助 <br>
7 同種造血幹細胞移植を受ける患者の援助 <br>
A.同種造血幹細胞移植の基礎知識 <br>
B.同種造血幹細胞移植を受ける患者の特徴 <br>
C.同種造血幹細胞移植を受ける患者への援助 <br>
8 内分泌療法を受ける患者の援助 <br>
A.内分泌療法の基礎知識 <br>
B.内分泌療法を受ける患者の特徴 <br>
C.内分泌療法を受ける患者への援助 <br>
9 肝動脈塞栓療法を受ける患者の援助 <br>
A.肝動脈塞栓療法の基礎知識 <br>
B.肝動脈塞栓療法を受ける患者の特徴 <br>
C.肝動脈塞栓療法を受ける患者への援助 <br>
<br>
第X章 慢性疾患を有する人とその家族への看護 <br>
X-1.呼吸器系の障害を有する人とその家族への援助 <br>
1 気管支喘息 <br>
A.気管支喘息患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.気管支喘息患者および家族への援助 <br>
2 慢性呼吸不全(慢性閉塞性肺疾患[COPD]を含む) <br>
A.慢性呼吸不全患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.慢性呼吸不全患者および家族への援助 <br>
3 肺がん <br>
A.肺がん患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.肺がん患者および家族への援助 <br>
X-2.循環器系の障害を有する人とその家族への援助 <br>
1 高血圧 <br>
A.高血圧患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.高血圧患者および家族への援助 <br>
2 不整脈 <br>
A.不整脈患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.不整脈のある患者および家族への援助 <br>
3 虚血性心疾患(狭心症,心筋梗塞) <br>
A.虚血性心疾患患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.虚血性心疾患患者および家族への援助 <br>
4 慢性心不全 <br>
A.慢性心不全患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.慢性心不全患者および家族への援助 <br>
X-3.消化器系の障害を有する人とその家族への援助 <br>
1 胃・十二指腸潰瘍 <br>
A.胃・十二指腸潰瘍患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.胃・十二指腸潰瘍患者および家族への援助 <br>
2 慢性肝炎 <br>
A.慢性肝炎患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.慢性肝炎患者および家族への援助 <br>
コラム 薬害肝炎について <br>
3 肝硬変 <br>
A.肝硬変患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.肝硬変患者および家族への援助 <br>
4 肝臓がん <br>
A.肝臓がん患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.肝臓がん患者および家族への援助 <br>
5 潰瘍性大腸炎 <br>
A.潰瘍性大腸炎患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.潰瘍性大腸炎患者および家族への援助 <br>
6 クローン病 <br>
A.クローン病患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.クローン病患者および家族への援助 <br>
X-4.代謝・内分泌系の障害を有する人とその家族への援助 <br>
1 糖尿病 <br>
A.糖尿病患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.糖尿病患者および家族への援助 <br>
2 脂質異常症 <br>
A.脂質異常症患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.脂質異常症患者および家族への援助 <br>
コラム メタボリックシンドローム <br>
コラム 特定健康診査・特定保健指導 <br>
3 甲状腺機能障害(亢進症・低下症) <br>
A.甲状腺機能障害(亢進症・低下症)患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.甲状腺機能障害(亢進症・低下症)患者および家族への援助 <br>
C.そのほかの甲状腺機能障害について <br>
X-5.腎・泌尿器系の障害を有する人とその家族への援助 <br>
1 慢性腎不全(慢性腎臓病) <br>
A.慢性腎不全患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.慢性腎不全患者および家族への援助 <br>
2 前立腺がん <br>
A.前立腺がん患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.前立腺がん患者および家族への援助 <br>
X-6.血液・免疫系の障害を有する人とその家族への援助 <br>
1 再生不良性貧血 <br>
A.再生不良性貧血患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.再生不良性貧血患者および家族への援助 <br>
2 白血病 <br>
A.白血病患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.白血病患者および家族への援助 <br>
3 HIV感染症/AIDS <br>
A.HIV感染者/AIDS患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.HIV感染者および家族への援助 <br>
4 関節リウマチ <br>
A.関節リウマチ患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.関節リウマチ患者および家族への援助 <br>
5 全身性エリテマトーデス <br>
A.全身性エリテマトーデス患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.全身性エリテマトーデス患者および家族への援助 <br>
X-7.脳・神経系の障害を有する人とその家族への援助 <br>
1 脳梗塞 <br>
A.脳梗塞患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.脳梗塞患者および家族への援助 <br>
2 パーキンソン病 <br>
A.パーキンソン病患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.パーキンソン病患者および家族への援助 <br>
3 筋萎縮性側索硬化症 <br>
A.筋萎縮性側索硬化症患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.筋萎縮性側索硬化症患者および家族への援助 <br>
4 重症筋無力症 <br>
A.重症筋無力症患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.重症筋無力症患者および家族への援助 <br>
X-8.感覚器系の障害を有する人とその家族への援助 <br>
1 視覚障害 <br>
A.視覚障害患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.視覚障害患者および家族への援助 <br>
2 突発性難聴 <br>
A.突発性難聴患者の身体的,心理・社会的特徴 <br>
B.突発性難聴患者および家族への援助 <br>
<br>
第Y章 事例で考える <br>
A.治療継続がむずかしい患者への支援  <br>
B.副作用が強い患者への症状マネジメント <br>
C.セルフモニタリングが必要な患者への教育的支援 <br>
D.治療の意思決定に直面している患者への支援 <br>
E.役割変更を迫られている患者・家族への支援 <br>
F.増悪を繰り返す患者への教育的支援 <br>
G.入退院を繰り返す心不全患者への支援 <br>