• 2022年新刊

エンドオブライフケア

その人にとっての最善をめざして

  • 編集

    谷本真理子 増島麻里子

  • ISBN

    978-4-524-23202-4

  • 発行年月

    2022年12月

  • 判型

    B5

  • ページ数

    260

  • 定価

    本体2,600円 + 税

  • 本書の特徴
  • 改訂のポイント
  • 序文
  • 主要目次
  • 改訂のポイント
  • 推薦のことば
  • 採用者のこえ
  • その他の情報

序文

医療の進歩や生活水準の向上によって日本は超高齢社会を迎え,今後は少子高齢多死社会が進みます.医療や福祉専門職はもとより,一般の人々もエンドオブライフの時期を生きる人にかかわる機会がさらに増えていくことでしょう.以前よりターミナルケアや緩和ケアという概念がありましたが,エンドオブライフケアは,このような人口動態や社会の変化を背景に新たに登場した概念です.より多様な疾患,複雑な病態,老いを重ねて最期(死)を迎える,人であれば避けることができないすべての人の人生の最終段階に必要なケアなのです.<br>
 これらのことから,本書の冒頭には,人が生きるということ,死ぬということについての考えを深められる章を設けました.次いで,社会の変化や制度や体制,エンドオブライフで生じる倫理的な課題について学び,人々のエンドオブライフの多様性に対応するための基本的な知識を涵養できるようにしました.そして,引き続く章では,エンドオブライフケアにかかわる概念,ケアの考え方,ケアのアプローチの具体的な学びを進めることができるように構成されています.エンドオブライフケアにおける看護専門職が担うべき役割について,学習者一人ひとりが自己の考えを深めていただければと思います.エンドオブライフケアは,個々の人生の総まとめにかかわる極めて個別性の高いケアを展開するので,本書では対象理解を深めることとケアのプロセスを重視しています.ケアのプロセスを通して対象理解が深まってゆくこと,そのことがより個別性の高いケアにつながることを,最後の章の事例を通して具体的に学んでいただきたいと考えています.そして,随所にコラムを盛り込み,社会的なトピックス,実践のエピソード,現場での取り組みなどを紹介しました.エンドオブライフケアへの興味・関心を高める一助となれば幸いです.<br>
 エンドオブライフケアにおいては,ケアの対象となる人や家族との言語的・非言語的な対話を通して相互の願いをすり合わせ,よい状態とはどのようなものか,その人にとっての最善とは何かを常に追求し,ケアを方向付けていくことが重要です.初学者にとって,これは難しいことと思われるかもしれません.けれども,唯一無二の人生を生きるその人のエンドオブライフに向き合うことを通して,看護者自身も学びを深める学習者でもあるのです.また,どんなに看護実践の経験を重ねたとしても,看護者自身がケアし尽くせたとは思えないケアプロセスとなることもあります.私たちは,生涯を通じて,人が生きるということ,死ぬということ,それを支えるケアとは何かを学び続ける姿勢を大切にすることが必要なのだと思います.<br>
 「死があるからこそ,今生きている時間をより意味があるように」と支えることの,尽きることのない学びの始まりに本書が役に立つことを願ってやみません.<br>
 本書の刊行にあたり,ご執筆いただいた多くの先生方,企画から伴走いただいた南江堂の皆様に深謝申し上げます.<br>
<br>
 2022年10月<br>
谷本真理子<br>
増島麻里子<br>

主要目次

目 次 <br>
序章 <br> エンドオブライフケアを学ぶにあたって
A.社会の変化とエンドオブライフケア <br>
B.本書におけるエンドオブライフケアとは <br>
第T章 <br> 人が生きるとは,死ぬとは
1 人が生きること,死ぬこと <br>
A.生きること,死ぬこととは <br>
B.死生観とその根本にある観念 <br>
C.死生観の変容 <br>
D.生物学的な死,医学的な死,法・制度的な死 <br>
2 発達段階からみた死20 <br>
A.小児期における死 <br>
B.成人期における死 <br>
C.老年期における死 <br>
第U章 <br> 死をとりまく社会状況
1 日本における終末期医療・ケア <br>
A.社会の変化に伴う看取りの形態の変化 <br>
B.「終末期医療」から「人生の最終段階における医療・ケア」へ <br>
C.死を迎える場の動向―医療・介護の連携と看取り <br>
2 死を迎える場所とかかわる人たち <br>
A.死を迎えるさまざまな場 <br>
B.死を迎える人にかかわる人たち <br>
3 看取りに関する倫理的課題 <br>
A.エンドオブライフケアと臨床倫理 <br>
B.看取りにおける倫理的課題 <br>
第V章 <br> エンドオブライフケアとは
1 エンドオブライフケアの定義および基盤となる概念 <br>
A.エンドオブライフケアおよび関連する用語 <br>
B.エンドオブライフケアの基盤となる概念 <br>
C.エンドオブライフの時期における心理過程 <br>
2 意思決定 <br>
A.意思決定とは―共同意思決定の時代 <br>
B.意思決定の型の変遷 <br>
C.合意形成プロセス―「情報共有―合意モデル」 <br>
D.本人の意思の尊重―人生の物語りを基本に <br>
E.アドバンス・ケア・プランニング―エンドオブライフの時期の意思決定支援 <br>
F.医療・ケアチームとしての対応の重要性 <br>
3 エンドオブライフケアにおけるチームアプローチ <br>
A.チームアプローチとは <br>
B.エンドオブライフケアにおけるチームアプローチ <br>
第W章 <br> 最期までよりよく生きることを支えるエンドオブライフケアの考え方
1 最期までよりよく生きることを支えることとは <br>
A.人生を生ききる人に備わる力を信じること <br>
B.その人らしく生きる主体性を支えること <br>
C.コミュニケーションを通して本人の生きる意味とケアの方向性を確かにすること <br>
D.苦痛や負担を緩和すること <br>
E.倫理的な問題状況に気づき,把握し対応すること <br>
F.ケアの質保証とケアシステムの構築 <br>
2 その人にとっての“望ましい状態”と状態把握の視点 <br>
A.エンドオブライフの時期における“望ましい状態” <br>
B.エンドオブライフの時期にある人の状態をとらえる視点 <br>
3 対象理解の視点 <br>
A.全身状態(身体/精神症状を含む) <br>
B.本人の現状理解/全身状態の理解と対処 <br>
C.他者の存在 <br>
D.療養場所・居場所 <br>
E.人生上の価値 <br>
F.生死についての考え方やとらえ方 <br>
第X章 <br> エンドオブライフの時期にある人への援助
1 症状マネジメント <br>
A.症状マネジメントとは <br>
B.症状マネジメントに必要なアセスメント <br>
C.対象特性の違いによる留意点 <br>
D.症状マネジメントの実際 <br>
2 日常生活支援 <br>
A.日常生活支援とは <br>
B.日常生活支援に必要なアセスメント <br>
C.対象特性の違いによる留意点 <br>
D.日常生活支援の実際 <br>
3 意思決定支援 <br>
A.意思決定支援とは <br>
B.意思決定支援に必要なアセスメント <br>
C.対象特性の違いによる意思決定支援の留意点 <br>
D.意思決定支援の実際 <br>
第Y章 <br> 臨死期の看護
1 死が近づいた人の身体徴候のとらえ方 <br>
A.臨死期とは <br>
B.臨死期の身体の変化・徴候とアセスメント <br>
2 看取り時の看護 <br>
A.苦痛の緩和と安楽への援助 <br>
B.看取り当日までの家族へのケア <br>
C.亡くなった後の看護 <br>
D.看取りの実際 <br>
第Z章 <br> エンドオブライフにかかわる人への支援―家族,親近者
1 家族および親近者の心理・心理過程 <br>
A.本人をとりまく存在と関係性 <br>
B.悲 嘆 <br>
C.死に直面した人の家族などにおける心理過程 <br>
D.本人の疾患や死が家族などに与える影響 <br>
2 家族や親近者の力を引き出す支援 <br>
A.エンドオブライフの時期にある人の家族や親近者への支援の意義 <br>
B.エンドオブライフの時期の病態や治療の理解にまつわる支援 <br>
C.エンドオブライフの時期にある人の支援者としての家族への支援 <br>
D.ケアの対象者としての家族への援助 <br>
3 遺族や残された親近者およびケアにあたった医療者への支援 <br>
A.グリーフケア <br>
B.医療・福祉関係者におけるグリーフとその支援 <br>
第[章 <br> 事例で学ぶエンドオブライフケア
1 病院で最期を迎えるまでの意思決定と調整 <br>
2 療養場所の移行における調整と連携 <br>
3 人工呼吸器装着に関する意思決定支援 <br>
4 不安,悲嘆が強い家族の看護 <br>
5 介護施設で暮らす認知症患者の医療介入と終の棲家の選択の支援 <br>
6 エンドオブライフの時期にある子どもの理解と看護 <br>
7 独居高齢者の在宅での看取りに向けたシステムづくりと看護 <br>
8 関係構築が難しい脆弱な長期療養患者の意向理解と支援 <br>