- 2022年改訂
成人看護学 成人看護学概論(改訂第4版)
社会に生き世代をつなぐ成人の健康を支える
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編集
林直子 酒井郁子 鈴木久美 梅田恵
- ISBN
978-4-524-23073-0
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発行年月
2022年3月
- 判型
B5
- ページ数
352
- 定価
本体2,500円 + 税
正誤表・リーフレット
- 2023/03/30第1刷〜第2刷
序文
本書『看護学テキストNiCE 成人看護学 成人看護学概論─社会に生き世代をつなぐ成人の健康を支える』の第3 版が刊行されてから3 年,初版の刊行からは早いもので11 年が経過しました.本書は,初版のときから一貫して成人期にある人を成長発達の視点と社会文化的視座からとらえ,身体的,心理的特徴と健康問題,さらに成人期にある人を取り巻く社会的環境について最新のトピックスを交えながら解説してきました. <br>
第3 版の刊行以降,看護教育においては保健師助産師看護師学校養成所指定規則が改正され,2022 年度入学生から改正カリキュラムが適用されることとなりました.今回の改正は,情報通信技術(ICT)活用のための基礎能力,コミュニケーション能力,臨床判断に必要な基礎的能力などの強化と,療養の場の多様化に伴う地域・在宅看護論の設定,そしてこれらに伴う総単位数の増加を特徴としています.基礎教育課程において解剖生理や病態など,看護の対象理解に必要な基礎知識の強化のみならず,社会状況を反映した“人”の理解と情報技術を習得することがいっそう求められているといえるでしょう.一方,2020 年以降,過去に類を見ないレベルの感染拡大をもたらしている新型コロナウイルスの蔓延により,これまで対面中心で行ってきた看護教育においても,教授形態を大きく変えることが求められました.遠隔指導も種々取り入れながら,真に教授すべき内容は何か,臨床現場での実習の代替になるようなシミュレーション学習は可能か,各教育機関で試行錯誤しながら,可能な限り最善の教育を提供することに注力してきたことと思います. <br>
皆様のご協力のもと,本書はこれまで多くの看護系大学,専門学校などでご活用いただいてきました.版を重ねるたびに,高齢化や雇用状況の変化など,その時々の成人を取り巻く社会状況や,日本各地で発生した自然災害による健康被害,生活習慣病の広がりやSNSによる精神的ストレスの増加など,時代を反映した内容となるよう改訂してきました.2022 年4 月から成人年齢が18 歳に引き下げられ,世の中の「成人」の定義も大きく変わること,また超高齢社会を反映し,近年高齢者の定義の区分に関する提言が学会から出されるなど,発達段階と年齢のパラダイムが大きくシフトしつつあります.このような状況を踏まえ,今回の改訂では,健康に関する最新統計の反映はもとより,日本に暮らす成人期にある人のライフスタイルの多様性,情報リテラシー,成人にとっての病気の体験の意味,災害と健康に関する項目を新設し,社会で働き,暮らし,生きる成人の健康に対する理解を深められるよう,内容を強化しました.また対象理解を深めるべく,セクシュアリティの多様性に関する項目と,レジリエンス,ストレングスモデルについて新たに項目を設定し丁寧に解説いたしました. <br>
本書が,これまで以上に看護基礎教育課程で学ぶ学生の皆さんの学修の一助となることを,また教員諸氏の看護学の読本として広く活用されることを願っております. <br>
2022年2 月 <br>
林 直子 <br>
鈴木 久美 <br>
酒井 郁子 <br>
梅田 恵 <br>
主要目次
第T章 成人とは <br>
1 「成人」とは <br>
A.成人の定義 <br>
B.成人の理解の視座 <br>
2 成人期の特徴 <br>
A.成人の心身の特徴と変化 <br>
B.ライフサイクルからみた成人期の特徴と発達課題 <br>
C.社会との相互作用からみた成人期の特徴 <br>
D.文化のなかで生きる成人 <br>
第U章 成人をとりまく今日の状況 <br>
1 家族をめぐる状況 <br>
A.日本における家族形態の変遷 <br>
B.現代の家族 <br>
C.現代の家族が内包する問題・課題 <br>
2 仕事をめぐる状況 <br>
A.日本における雇用・労働をめぐる労働環境の変化 <br>
B.現代の雇用環境や就労環境:特徴と問題への取り組み <br>
3 日常生活スタイルの変化 <br>
A.成人の日常生活と健康 <br>
B.嗜好と依存症 <br>
C.情報社会と情報リテラシー,ヘルスリテラシー <br>
D.ライフスタイルの多様性 <br>
4 セクシュアリティの多様性 <br>
A.セクシュアリティとジェンダー <br>
B.日本におけるジェンダー・ギャップ <br>
C.多様な性のあり方 <br>
D.セクシュアリティと暮らし <br>
5 環境問題の深刻化 <br>
A.公害問題から地球環境問題へ <br>
B.持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて <br>
C.日本の大気環境・水質環境・土壌環境の状況 <br>
D.地球温暖化と防止対策に向けた取り組み <br>
E.資源循環型社会の構築に向けて <br>
F.住宅の環境問題 <br>
6 死生観の変容 <br>
A.日本人の来世信仰 <br>
B.日本における霊魂観の特殊性 <br>
C.現代人にもアニミズムの感覚はある? <br>
D.時代によって変わる「あの世」との付き合い方 <br>
E.「むき出しの死」を超える人と人の絆 <br>
第V章 成人期にある人の健康 <br>
1 健康とは <br>
A.看護における「健康」概念の位置づけ <br>
B.WHO憲章の健康の定義 <br>
C.WHO憲章以降の「健康」概念の進展 <br>
D.成人の健康とは <br>
2 成人にとっての病気の体験とは <br>
A.病気とは何か <br>
B.成人にとっての病気の体験 <br>
3 成人保健と今日の健康動向 <br>
A.人口構成 <br>
B.平均寿命と健康寿命 <br>
C.疾病の概況 <br>
4 保健・医療・福祉政策と今日の健康課題 <br>
A.ヘルスプロモーションとは <br>
B.地域包括ケア <br>
C.がん対策 <br>
D.認知症対策 <br>
5 生活習慣と健康 <br>
A.生活習慣が健康に与える影響 <br>
B.生活習慣がもたらす健康障害:生活習慣病 <br>
6 職業・労働と健康 <br>
A.職業・労働が健康に与える影響 <br>
B.労働者の健康にかかわる主な法律 <br>
C.職業・労働,労働環境がもたらす健康障害 <br>
7 生活ストレスと健康 <br>
A.ストレスが健康に与える影響 <br>
B.ストレスがもたらす健康障害 <br>
8 性・更年期と健康 <br>
A.性と健康 <br>
B.更年期と健康 <br>
9 災害と健康 <br>
A.災害が健康に与える影響 <br>
B.災害がもたらす健康障害 <br>
第W章 成人期にある人を看護するための基本的な考え方 <br>
1 関係を結ぶ <br>
A.ケアリングに基づいた関係 <br>
B.パートナーシップを構築する <br>
C.その人のレジリエンスに目を向ける <br>
D.その人の強みを活かす <br>
2 適応を促す <br>
A.ストレス・コーピングを支える <br>
B.危機的状況からの回復を支える <br>
C.喪失と悲嘆を支える <br>
D.自己決定を支える <br>
3 発達を促進する <br>
A.成人のセルフケアを育む <br>
B.セルフ・エフィカシーを高める <br>
C.成人学習を促進する <br>
4 統合を支援する <br>
A.家族とともに生きる成人を支援する <br>
B.成人が身をおく文化を尊重する <br>
C.成人が社会に支えられ,社会に貢献することを支援する <br>
第X章 健康状態に応じた看護 <br>
1 ヘルスプロモーション,ヘルスプロテクション──健康の保持・増進,疾病の予防に向けた看護 <br>
A.保健行動と行動変容 <br>
B.生活習慣病の予防対策 <br>
C.高齢者医療確保法における特定健康診査と特定保健指導 <br>
D.定期健康診断と保健指導 <br>
E.職業疾患とその予防 <br>
F.快適な職場環境づくり <br>
2 健康状態が急激に変化し急性の状態にある人への看護 <br>
A.健康状態が急激に変化し急性の状態にある人とは <br>
B.急性期看護とは <br>
C.周手術期看護とは <br>
D.クリティカルケアとは <br>
E.急性の状態にある患者と家族に対する看護 <br>
3 生活機能障害のある人への看護(リハビリテーション看護) <br>
A.生活機能と生活機能障害 <br>
B.リハビリテーションとは <br>
C.リハビリテーションを展開するための基本的な考え方 <br>
D.リハビリテーションを必要とする人への看護 <br>
4 慢性的な経過をたどる健康障害を有する人への看護 <br>
A.慢性的な経過をたどる健康障害 <br>
B.慢性疾患を有する人の特徴 <br>
C.慢性疾患を有する人への看護 <br>
5 人生の最終段階にある人への看護 <br>
A.成人の死とは <br>
B.最期を迎える準備 <br>
C.最期を迎える人の身体的な変化 <br>
D.最期を迎える人の心の変化 <br>
E.最期のときを迎える人や家族への看護 <br>
第Y章 成人看護を充実させる実践的環境 <br>
1 看護職の倫理綱領と成人看護 <br>
A.人権とは <br>
B.看護職の倫理綱領 <br>
C.個人情報の保護 <br>
D.さまざまな状況における患者の意思決定支援 <br>
2 専門職間の連携と協働 <br>
A.専門職間の連携・協働とは <br>
B.専門職間の連携・協働におけるグランドルール(原則) <br>
C.専門職間の連携・協働を実践するための力 <br>
D.保健・医療・福祉の場におけるさまざまなチーム <br>
3 医療安全 <br>
A.「医療の質」とは何か <br>
B.「医療の質」評価と質向上の方法 <br>
C.医療の質向上とセーフティ・マネジメント <br>
4 質の高い看護実践のための人材育成 <br>
A.専門看護師 <br>
B.認定看護師 <br>
索引 <br>