• 2022年新刊

感染看護学

患者の健康と権利を守り安全に看護を実践する

  • 編集

    操華子 川上和美

  • ISBN

    978-4-524-22978-9

  • 発行年月

    2022年1月

  • 判型

    B5

  • ページ数

    276

  • 定価

    本体2,600円 + 税

  • 本書の特徴
  • 改訂のポイント
  • 序文
  • 主要目次
  • 改訂のポイント
  • 推薦のことば
  • 採用者のこえ
  • その他の情報

序文

本書は,2019 年末に出現した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が世界中でまさに猛威をふるうなかで企画されました.2021 年11 月現在,日本における第6 波への備えが検討されているなか,海外ではすでに感染の再拡大がみられ,ロックダウンの指示が政府から出されるというニュースも流れています.<br>
 本書の第T章で触れられているように,人類が対峙してきた伝染病,感染症は数多くあります.1918 年に発生し世界中で流行したスペイン風邪と呼ばれるインフルエンザのパンデミックによる死者数は,全世界で4,000 万〜5,000 万人といわれ,1 億人にのぼるという説も報告されています.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行し始めた当初は,このスペイン風邪の被害状況と比較され,感染予防策が検討されていました.ヒトは微生物に守られ,共生しながら,時に対峙をしなければなりません.ゼンメルワイス,ジェンナー,北里柴三郎をはじめとした先人たちの偉業もそのなかでつくられてきたものです.繰り返される感染症との対峙という経験のなかから学ぶことがたくさんあります.<br>
 ところで読者の皆さんは,「感染」「感染予防」「感染看護」という言葉に対してどのようなイメージを抱いているでしょうか.たとえば,患者さんは消化器外科,脳神経外科,循環器内科,小児科,産婦人科,集中治療部門,呼吸器内科,精神科などさまざまな診療科を受診し,検査・治療,看護を受けます.この診療・看護を縦の糸とすると,感染予防はすべての診療・看護に通じる横の糸です.表現を変えると,医療・看護を受けるすべての患者さんに発生するリスクのある現象が,感染です.そのことをふまえ,本書では可能な限り,縦と横の糸が織り交ざるよう具体的な例を提示し,必要な感染看護を考えるという内容にしました.<br>
 本書での感染看護学の定義,考え方については序章で述べていますので,そちらを参照いただきたいと思います.ここでは,感染看護学の英語表記を「infection prevention nursing」としたことについて触れたいと思います.日本の看護の現場で活躍しているスペシャリストとして,感染管理認定看護師(certified nurse in infection control:CNIC),感染症看護専門看護師(certified nurse specialist in infection control nursing:CNSIC)がいます.筆者は米国留学中,この2 種類のスペシャリストについて同級生や教員に説明する際,非常にむずかしさを感じたことを思い出します.「どのように違うのか」という質問への回答に難儀しました.「感染管理」も「感染症看護」も,英語だといずれもinfection controlですので,同じ専門領域に2種類のスペシャリストがいる,その違いは何かということが当然,彼らの関心事となりました.感染症を有する患者への看護を担うという点で,感染症看護専門看護師についてはinfectious disease nursingと表現したこともありました.しかしながら,どちらのスペシャリストも上述した横糸に携わり,感染リスクを判断し,リスクを最小限にするための予防策を講じ,感染の発生を未然に防ぐとともに,感染症患者への全人的な看護ケアの実践からさらなる伝播を予防するという実践が責務であることに変わりはありません.この「予防(prevention)」という点を大切にしたいと思い,感染看護学の英語表記をinfection control nursing ではなく,infection prevention nursingとしました.<br>
 本書の執筆は,基礎教育や医療現場で活躍し,時に未知な出来事を経験され,その経験からさまざまなことを学ばれてきた感染看護の専門家の皆さまに担っていただきました.COVID-19 のパンデミック下にもかかわらず,執筆を快くお引き受けくださったことに心から感謝をしております.そして,読者の皆さんに本書をお届けすることができたのは,最後まで叱咤激励を続けてくださった南江堂出版部の皆さまのおかげです.本当にありがとうございました.<br>
 本書が,今後の医療・看護における感染予防に貢献することを心から願っております.<br>
2021 年11 月<br>
操  華子<br>
川上 和美<br>

主要目次

序章 感染看護学を学ぶにあたって <br>
第T章 感染症をめぐる歴史と現状 <br>
 1 感染症と人類の歩み <br>
 2 現代社会における感染症をめぐる課題 <br>
第U章 感染の基礎知識と感染症 <br>
 1 感染とは <br>
 2 現代における主な感染症 <br>
第V章 感染症と法制度 <br>
 1 感染症に関する法の変遷と感染症法 <br>
 2 日本における感染症にかかわる医療体制 <br>
 3 公衆衛生と感染症 <br>
第W章 感染予防策の実施における考え方 <br>
 1 感染予防のための基本的な考え方 <br>
 2 感染予防のための基本技術 <br>
第X章 感染予防における多職種連携 <br>
 1 施設内での多職種連携 <br>
 2 地域との連携 <br>
第Y章 感染看護と倫理 <br>
 1 倫理と人権 <br>
 2 感染症に伴う倫理的課題 <br>
第Z章 さまざまな状況における感染看護の実際 <br>
 1 一般病棟における感染看護の実際 <br>
 2 外来における感染看護の実際 <br>
 3 救急外来における感染看護の実際 <br>
 4 集中治療領域における感染看護の実際 <br>
 5 周産期領域・NICUにおける感染看護の実際 <br>
 6 手術室における感染看護の実際 <br>
 7 人工透析室における感染看護の実際 <br>
 8 リハビリテーション室における感染看護の実際 <br>
 9 小児科病棟における感染看護の実際 <br>
 10 精神科病棟における感染看護の実際 <br>
 11 在宅(訪問看護)における感染看護の実際 <br>
 12 高齢者介護施設における感染看護の実際 <br>
 13 災害時の感染看護の実際 <br>
 14 感染症患者が亡くなったとき <br>
第[章 感染管理と看護 <br>
 1 感染管理プログラム(感染管理活動)とは <br>
 2 感染管理はどのように行われるか <br>
第\章 感染管理プログラム展開の実際 <br>
 1 院内の感染管理体制の構築・維持のための活動(サーベイランス) <br>
 2 エビデンスに基づく実践(EBP) <br>
 3 アウトブレイク時の感染管理 <br>