• 2022年改訂

家族看護学(改訂第3版)

臨床場面と事例から考える

  • 編集

    山崎あけみ 原礼子

  • ISBN

    978-4-524-22929-1

  • 発行年月

    2022年3月

  • 判型

    B5

  • ページ数

    316

  • 定価

    本体2,500円 + 税

  • 本書の特徴
  • 改訂のポイント
  • 序文
  • 主要目次
  • 改訂のポイント
  • 推薦のことば
  • 採用者のこえ
  • その他の情報

序文

本書は,看護者が「家族」を分析の単位として実践・研究・教育に取り組むための解説書として2008 年に上梓以来,今日まで多くの方々にご支援いただき版を重ねることができました.第3 版への改訂にあたり,看護学生にとって家族看護学の入門書となること,かつキャリアを積んだ看護者にとっては,家族看護を考え学び続けるための手引きともなるようにという編集方針を守りながら,初版時以来の以下の3 つの特徴について,さらに増補しました.<br>
 第一に,個人への看護過程と同時進行し,可視化が難しいとされる家族看護過程を鮮明にイメージできるような臨床場面を豊富に取り入れています.看護者が,家族と共にその内外への相互作用をシステミックに探索する思考過程を体得していただければ幸いです.<br>
 第二に,第T章で家族発達理論・家族システム理論を軸に家族を捉える対象理解の方法を解説したうえで,本書全般にわたって理論に基づいた家族看護学の実践・研究を学んでいただけるように構成しました.初学者にとって理論はなじみにくいかもしれませんが,家族看護過程の目標設定,家族を対象とした研究計画立案時など,多くの局面で指針となるからです.<br>
 第三に,Family Diversity(家族の多様性)への感受性を高めるために,当事者や支援者の方々より,メッセージ・解説・家族写真・動画・描画をご提供いただきました.看護者には,ひとつとして同じ家族はないことを尊重し,ご家族からも学ぶ専門職としての姿勢をもつことを願っています.<br>
 本改訂の編集作業は,COVID&#8212;19 のパンデミックの渦中に進みました.出産,闘病,看取りといった家族が凝集するライフイベントにおいて,厳しい面会制限等,限界の中にあっても,日々看護者は家族看護をあきらめることなく挑戦し続けていると確信します.本書が,家族本来の,また個々の家族員にとって温かで力強いセルフケアを引き出すための看護者による実践・研究・教育の一助となれば幸いです.読者の皆様から,忌憚ないご意見をいただきたく存じます.<br>
 最後に,ご執筆くださいました先生方,本書改訂版刊行までご尽力くださいました南江堂の皆様に心からお礼申し上げます.<br>
2022 年1 月<br>
編者を代表して<br>
山崎あけみ<br>

主要目次

はじめに <br>
序章 家族看護学をはじめて学ぶ <br>
  A.看護のなかの家族 <br>
  B.家族をどうみるか <br>
  C.家族看護学を学ぶ <br>
  D.家族看護学の発展と動向 <br>
第T章 家族看護学における対象理解 <br>
 はじめに <br>
 1 発達する家族 <br>
  A.家族発達理論 <br>
  B.個々の発達段階における特徴 <br>
  C.発達する家族の理解 <br>
  D.家族周期における2つの移行 <br>
 2 システムとしての家族 <br>
  A.家族システム理論 <br>
  B.システムとしての家族の理解 <br>
  C.家族システムの安定と変化 <br>
  D.家族システムの構造 <br>
 3 家族を理解するポイント <br>
  A.家族のウチ・ソトを知る技法 <br>
  B.看護の対象としての家族のとらえ方 <br>
 4 家族像の形成 <br>
  A.家族を理解する情報・指針 <br>
  B.プロセスとしての家族像形成 <br>
  C.多様性 <br>
第U章 家族看護過程に用いる考え方(理論,モデル,概念) <br>
 はじめに <br>
 1 健康な家族についての考え方 <br>
  A.ストレスに対処している家族:家族ストレス対処理論とは <br>
  B.機能している家族の構造:家族構造-機能理論とは <br>
 2 家族の力を引き出すのに役立つ考え方 <br>
  A.セルフケア <br>
  B.パートナーシップ <br>
  C.家族エンパワメント <br>
 3 代表的な家族アセスメントモデル <br>
  A.フリードマン家族アセスメントモデル <br>
  B.ハンソン家族アセスメント・介入モデル <br>
  C.家族のヘルス・プロモーションモデル <br>
  D.カルガリー家族アセスメント/介入モデル,イルネスビリーフモデル <br>
  E.渡辺式家族アセスメント/支援モデル <br>
第V章 家族看護過程:家族の健康を引き出す看護過程 <br>
 はじめに <br>
 1 家族看護過程とは <br>
  A.家族看護過程の特徴 <br>
  B.家族看護過程の構成要素 <br>
 2 家族看護過程の展開 <br>
  A.第1段階:入院してから数日間 <br>
  B.第2段階:入院してから2週間 <br>
第W章 家族を取り巻く社会的・文化的背景 <br>
 はじめに <br>
 1 日本人と家族 <br>
  A.家から家族へ <br>
  B.看護者にとっての日本の家族 <br>
 2 現代日本の家族 <br>
  A.超高齢社会から人口減少社会へ <br>
  B.核家族世帯から単独世帯へ <br>
  C.標準(モデル)家族の崩壊 <br>
  D.多様化と個人化の尊重 <br>
 3 在宅療養者と家族 <br>
  A.在宅療養者と家族を取り巻く社会的状況 <br>
  B.在宅療養者と家族への多職種による支援と看護者の役割 <br>
  C.在宅療養者と家族を理解するポイント <br>
第X章 事例で学ぶ家族看護過程の実際 <br>
 はじめに <br>
 1 配偶者からの暴力被害者と家族の看護:DVのスクリーニングと被害者の支援 <br>
 2 医療的ケア児を在宅に迎える家族への看護:社会的資源を取り入れた家族資源の再構築を目指す <br>
 3 小児生体肝移植における患者と家族への看護:家族の凝集性を回復する <br>
 4 教育期にあるうつ病患者と家族の看護:家族システムの再構築を支える <br>
 5 教育期にある脳腫瘍患者と家族の看護:家族の生活の構造に変容を促す <br>
 6 がん治療のため入院している在留外国人と家族の看護:文化の違いを理解して信頼関係を構築し,支える <br>
 7 高次脳機能障害と共に生きる患者・家族の看護:外来において家族の適応を促す <br>
 8 意思決定過程にあるがん患者と家族の看護:意思決定の葛藤を支える <br>
 9 認知症高齢者を介護する家族の看護:家族内ニーズの競合調整と生活リズムの安定化を促す <br>
 10 完結期にある虚弱高齢者と家族の看護:在宅での看取りにおける意思の揺れを支える <br>
第Y章 家族看護実践に役立つ研究 <br>
 はじめに <br>
 1 家族看護における研究の特徴・課題 <br>
  A.家族データの特徴 <br>
  B.研究目的と研究デザインの種類 <br>
 2 研究計画の方法 <br>
  A.家族看護実践に役立つ一般的な知見の探求@:量的研究 <br>
  B.家族看護実践に役立つ一般的な知見の探求A:質的研究 <br>
  C.家族を研究の対象とするときの倫理的配慮 <br>
 3 家族看護における研究の実際 <br>
  A.家族看護実践をまとめる:事例研究 <br>
  B.家族看護実践のエビデンスをつくる:ランダム化比較試験(RCT)Laurel L. Northouse,Lixin Song <br>
  C.おわりに <br>
演習課題 <br>
索引 <br>