- 2022年改訂
小児看護学I 小児看護学概論・小児看護技術(改訂第4版)
子どもと家族を理解し力を引き出す

-
編集
二宮啓子 今野美紀
- ISBN
978-4-524-22756-3
-
発行年月
2022年1月
- 判型
B5
- ページ数
536
- 定価
本体3,600円 + 税
サポート情報
- 2023/05/19最新の情報に基づく補足
序文
<b>【はじめに】</b><br>
本書は2009 年に初版,2012 年に改訂第2 版,2017 年に改訂第3 版が刊行され,このたび5 年ぶりに改訂第4 版が刊行されることになりました.第3 版までは,『NiCE 小児看護学概論』『NiCE 小児看護技術』という分冊でしたが,第4 版では編成を見直し,『NiCE 小児看護学T 小児看護学概論・小児看護技術』と『NiCE 小児看護学U 小児看護支援論』の2 冊に変更しました.本書『NiCE 小児看護学T 小児看護学概論・小児看護技術』は,「第1 部 小児看護学概論」「第2 部 小児看護技術」の2 部構成とし,小児看護学の基本的な知識と技術を1 冊にまとめ,技術演習の際に1 冊で役立つようにしました.<br>
<br>
第3 版刊行からの5 年間で子どもと家族を取り巻く状況は大きく変化しています.少子化の進展,地球温暖化に伴う災害の多発,新興感染症のパンデミックが起こっています.一方で,医療の進歩は著しく,新しい治療法や医療機器の開発,蓄積された研究成果にもとづいたガイドラインの改訂が行われ,小児医療・看護に関連する法律の制定・改正や診療報酬の改定も行われています.<br>
<br>
第4 版では,この間の小児を取り巻く社会制度や社会情勢の変化を反映するよう,統計データや関連法規,国の施策等を最新の情報に更新するとともに,より小児看護の全体像を理解しやすいように,下記の通り改訂を行いました.<br>
<br>
第T章は,「小児看護とその対象を理解する」とし,「家族」の項を整理し,多様化,複雑化する家族の様相や家族と社会との関係についての記述を追加しました.「第U章 子どもの健康な生活を支える法・制度」を章立てし,「保健統計」「教育と制度」「学校保健」の項を新設しました.また,小児医療と看護の現状を系統的に概説する章として,「第W章 小児医療と小児看護の基本」を新たに設け既存の内容を整理したうえで,「医療安全」の節を立てました.さらに,障害,虐待,心の問題など発達段階別に切り分けにくい健康問題を扱う章として,「第X章 健康問題を抱える子どもと家族への支援」を新設しました.「第Y章 子どもに特徴的な症状と看護」では,「いつもと違う」という項を作りました.<br>
<br>
小児看護学を初めて学ぶ学生の皆さんに講義や実習で活用していただくとともに,実践の場で活躍している看護師の方々にも広く活用していただければ幸いです.また,本書に対するご意見やご感想などもぜひお寄せください.<br>
<br>
最後になりましたが,本書の企画に賛同してご参加いただいた執筆者の方々,本書の企画から刊行までご尽力くださいました南江堂の皆様に心から感謝いたします.<br>
<br>
2021 年11 月<br>
二宮啓子<br>
今野美紀<br>
<br>
<br>
<b>【初版の序(小児看護学概論)】</b><br>
近年の高度医療は,複雑な健康問題をもつ小児と家族の増加をもたらすとともに,入院期間の短縮化をもたらしました.在宅で療養生活を送る慢性疾患をもつ小児や重症心身障害児が増加し,それに伴い,医療的ケアを行いながら学校に通う小児も増加しています. そのため,平成17 年度には特別支援学校に看護師が本格的に導入されました.また,近年のめざましい産業の発展や生活習慣の欧米化は,過食,運動不足,夜型生活習慣などの不健康な生活習慣によるメタボリック症候群や生活習慣病の増加をもたらし,成人と一緒に生活している小児にも同様の現象がみられています.テレビ,パソコン,携帯電話の普及は,小児にとって利点もありますが,一人遊びの増加によるコミュニケーション能力の低下,誹謗中傷によるいじめなどの新たな問題を引き起こしています.さらに,少子高齢化や核家族化などの社会の変化は,育児不安や児童虐待など,小児をとりまく家族にかかわる問題をもたらしています.<br>
<br>
小児看護では,このような社会の変化とそれに対する看護の役割拡大を視野に入れながら,小児の発達段階,家族との関係について理解することが重要です.セルフケア能力に応じて親や看護師が必要なケアを行うことにより,小児の成長・発達は促進されます.また,小児と成人で構成される家族も,家族員のなかで多様な発達段階を経験し,日々相互に影響し合いながら家族として発達していきます.そのため,小児の健康だけに着目するのではなく,家族看護の視点で,家族全体を1 つのシステムとして捉える必要があります.小児と家族の発達段階を理解するとともに,小児と家族がもっている力を最大限にひきだし,直面するライフイベントや危機に対処できるように,ヘルスプロモーションの視点で小児と家族に寄り添いながら援助を行っていくことが大切です.家族のあり方が多様化した今日,小児が実父母によって養育されている状況ばかりではありませんが,小児にとって養育者役割を担っているものを本書の中では「親」としています.<br>
<br>
また,小児看護は,入院中の小児だけでなく,さまざまな場面においてあらゆる健康レベルにある小児を対象としています.小児は発達していく存在であり,年齢や健康レベルにかかわらず健やかに育っていく権利を有しています.1 人の人として小児を尊重し,社会のなかで健やかに成長し生きていくことができるように看護を提供することが,私たち小児看護に携わる看護者の責務です.<br>
<br>
小児看護学を初めて学ぶ学生の皆さんに講義や実習で活用していただくとともに,実践の場で活躍している看護師の方々にも広く活用していただければ幸いです.また,本書に対するご意見やご感想などもぜひお寄せください.<br>
<br>
最後になりましたが,本書の企画に賛同してご参加くださいました執筆者の方々,本書の企画から刊行までご尽力くださいました南江堂の皆様に心から感謝いたします.<br>
<br>
2009 年3 月<br>
二宮啓子<br>
今野美紀<br>
<br>
<br>
<b>【初版の序(小児看護技術)】</b><br>
これまでの小児看護実践のなかでは,「小児に説明をしてもわからない」,「嫌なことは素早くすませよう」,「泣いているわが子を目前に親が何もできなければ親子双方に悪影響」,などの考えが妄信されてきました.とりわけ,小児にとって侵襲的な検査・処置時には親子が引き離され,小児の力は過小に評価されて身体は抑制され,小児の安楽や権利に配慮した状態とは言いがたく,医療者主導のケアが散見されていました.<br>
<br>
しかし1994 年,わが国は「児童の権利に関する条約」に批准し,1999 年には,日本看護協会から小児看護領域の業務基準「小児看護領域で特に留意すべき子どもの権利と必要な看護行為」が提示されました.しだいに看護のなかでも子どもの権利を尊重する機運が生じ,子どもが大切に扱われ,安全で安楽に配慮した看護とは何かが探求されつつあります.<br>
<br>
一方,今日の小児医療をとりまく状況として,入院期間の短縮化,小児病棟の閉鎖と小児が入院する混合病棟の増加などがあります.そのため今後は,家庭など小児病棟以外の場でも小児をケアする機会が増し,親や家族に対してケアの方法を教授する役割が看護師に期待されています.<br>
<br>
小児看護学を初めて学ぶ学生の皆さんに講義,学内演習,実習で広く活用していただくとともに,実践の場で活躍されている看護師の方々にも活用していただければ幸いです.また,本書に対するご意見やご感想などもぜひお寄せください.<br>
<br>
最後になりましたが,本書の企画に賛同してご参加いただいた執筆者の皆様,写真撮影にご協力くださいました札幌医科大学職員・ご家族の皆様,札幌医科大学附属病院小児科看護室・神戸市立医療センター中央市民病院7 階西病棟の関係者の皆様,ならびに本書の企画から刊行までの全過程でご尽力くださいました南江堂の皆様に深謝いたします.<br>
<br>
2009 年3 月<br>
今野美紀<br>
二宮啓子<br>
主要目次
第1部 小児看護学概論 <br>
第T章 小児看護とその対象を理解する <br>
1 小児看護とは <br>
A. 小児看護の対象 <br>
B. 小児看護の目的 <br>
C. 小児看護の役割と責務 <br>
2 子ども <br>
A. 子どもとは <br>
B. 子どもの権利 <br>
C. 子どもの遊び <br>
D. 子どもの学び <br>
3 家 族 <br>
A. 家族とは <br>
B. 統計データからみる家族 <br>
C. 社会と家族の相互作用 <br>
D. システムとしての家族 <br>
第U章 子どもの健康な生活を支える法・制度 <br>
1 子どもに関する保健統計 <br>
A. 人口の動向 <br>
B. 出生,世帯に関する統計 <br>
C. 子どもの死亡に関する統計 <br>
2 子どもの保健・福祉に関する政策と法・制度 <br>
A. わが国の母子保健施策 <br>
B. 子どものヘルスプロモーションと法・制度 <br>
3 子どもの健康増進のための社会資源の活用 <br>
A. 子どもと家族の健康を支える社会資源 <br>
B. 予防接種 <br>
C. 子どもを守るためのセーフティプロモーション <br>
4 子どもの教育と制度 <br>
A. 子どもの教育と教育制度の概要 <br>
B. 病気や障害をもった子どもの教育の制度 <br>
5 学校保健 <br>
A. 学校保健とは <br>
B. 学校保健安全法 <br>
C. 学校保健の2本柱 <br>
D. 健康診断 <br>
E. 歯と口の健康 <br>
F. 学校において予防すべき感染症(学校感染症) <br>
第V章 子どもの成長・発達の特徴と支援 <br>
1 子どもの成長・発達の基礎知識 <br>
A. 子どもの成長・発達とは <br>
B. 形態・機能的発達 <br>
C. 心理・社会的発達 <br>
D. 身体・心理・社会的成長・発達の評価 <br>
E. 成長・発達とメディアとの付き合い方 <br>
2 新生児期の特徴と支援 <br>
A. 形態的発達 <br>
B. 機能的発達 <br>
C. 心理・社会的発達 <br>
D. 子どもと家族の日常生活への支援 <br>
E. 新生児期に起こりやすい健康問題と支援 <br>
3 乳児期の特徴と支援 <br>
A. 形態的発達 <br>
B. 機能的発達 <br>
C. 心理・社会的発達 <br>
D. 子どもと家族の日常生活への支援 <br>
E. 乳児期に起こりやすい健康問題と支援 <br>
4 幼児期の特徴と支援 <br>
A. 形態的発達 <br>
B. 機能的発達 <br>
C. 心理・社会的発達 <br>
D. 子どもと家族の日常生活への支援 <br>
E. 幼児期に起こりやすい健康問題と支援 <br>
5 学童期の特徴と支援 <br>
A. 形態的発達 <br>
B. 機能的発達 <br>
C. 心理・社会的発達 <br>
D. 子どもと家族の日常生活への援助 <br>
E. 学童期に起こりやすい健康問題と援助 <br>
6 思春期の特徴と支援 <br>
A. 形態的発達 <br>
B. 機能的発達 <br>
C. 心理・社会的発達 <br>
D. 子どもと家族の日常生活への援助 <br>
vE. 思春期に起こりやすい健康問題と援助 <br>
第W章 小児医療と小児看護の基本 <br>
1 小児医療の変遷と現状 <br>
A. 小児医療の変遷 <br>
B. 小児医療の現状 <br>
2 小児看護の変遷と現状 <br>
A. 小児看護の変遷 <br>
B. 小児看護の現状 <br>
3 小児医療における子どもへの倫理的配慮 <br>
A. 子どもの意思決定 <br>
B. 子どもの権利擁護 <br>
C. 子どもの意思決定・権利擁護を支える看護 <br>
4 小児医療における生命倫理 <br>
5 小児医療における子どもの遊び・学習 <br>
A. 入院している子どもと遊び <br>
B. 入院している子どもの学習 <br>
6 小児医療における医療安全 <br>
A. 子どもの成長・発達と事故 <br>
B. 小児医療におけるインシデント <br>
C. 小児医療における感染管理 <br>
第X章 健康問題を抱える子どもと家族への支援 <br>
1 身体障害のある子どもと家族への支援 <br>
A. 身体障害のある子どもとは <br>
B. 身体障害のある子どもと家族の特徴 <br>
C. 身体障害のある子どもと家族への支援 <br>
D. 身体障害のある子どもと家族を支える社会資源 <br>
2 発達障害のある子どもと家族への支援 <br>
A. 発達障害の定義と分類 <br>
B. 発達障害の診断基準と子どもの特徴 <br>
C. 発達障害のある子どもへの治療 <br>
D. 発達障害のある子どもと家族への支援 <br>
3 心の問題を抱える子どもと家族への支援 <br>
A. 小児期の心の諸問題の現状 <br>
B. 心の問題を抱える子どもと家族への支援 <br>
4 児童虐待を受けた子どもと家族への支援 <br>
A. 児童虐待の現状 <br>
B. 児童虐待を受けた子どもと家族の特徴 <br>
C. 虐待を受けた子どもと親への支援 <br>
D. 虐待を受けた子どもと家族を支える社会資源 <br>
5 災害を受けた子どもと家族への支援 <br>
A. 災害と災害弱者 <br>
B. 災害を受けた子どもに起こりやすい症状や状況 <br>
C. 災害を受けた子どもと家族への支援 <br>
D. 平時からの災害への備えと支援 <br>
第Y章 子どもに特徴的な症状と看護 <br>
1 いつもと違う <br>
A. 「いつもと違う」とは <br>
B. アセスメント <br>
2 痛 み <br>
A. 痛みの基礎知識 <br>
B. 子どもの痛みの特徴 <br>
C. 子どもの痛みのアセスメント <br>
D. 痛みを伴う子どもと家族への援助 <br>
3 発 熱 <br>
A. 発熱の基礎知識 <br>
B. 子どもの発熱の特徴 <br>
C. 発熱のアセスメント <br>
D. 発熱を伴う子どもと家族への援助 <br>
4 脱 水 <br>
A. 脱水の基礎知識 <br>
B. 子どもの脱水の特徴 <br>
C. 脱水のアセスメント <br>
D. 脱水を伴う子どもと家族への援助 <br>
5 嘔 吐 <br>
A. 嘔吐の基礎知識 <br>
B. 子どもの嘔吐の特徴 <br>
C. 嘔吐のアセスメント <br>
D. 嘔吐を伴う子どもと家族への援助 <br>
6 下 痢 <br>
A. 下痢の基礎知識 <br>
B. 子どもの下痢の特徴 <br>
C. 下痢のアセスメント <br>
D. 下痢を伴う子どもと家族への援助 <br>
7 発 疹 <br>
A. 発疹の基礎知識 <br>
B. 子どもの発疹の特徴 <br>
C. 小児期の皮膚の特徴 <br>
D. 発疹のアセスメント <br>
E. 発疹のある子どもと家族への援助 <br>
8 呼吸困難 <br>
A. 呼吸困難の基礎知識 <br>
B. 子どもの呼吸困難の特徴 <br>
C. 呼吸困難のアセスメント <br>
D. 呼吸困難のある子どもと家族への援助 <br>
9 けいれん <br>
A. けいれんの基礎知識 <br>
B. 子どものけいれんの特徴 <br>
C. けいれんのアセスメント <br>
D. けいれんのある子どもと家族への援助 <br>
第2部 小児看護技術 <br>
第Z章 コミュニケーション技術・アセスメント技術 <br>
1 コミュニケーション <br>
A. コミュニケーションに関する基礎知識 <br>
B. 病院における子どもとのコミュニケーション <br>
2 健康歴の聴取 <br>
3 全身状態の把握 <br>
4 バイタルサイン <br>
A. バイタルサインの概要 <br>
B. 呼 吸 <br>
C. 脈拍(心拍数) <br>
D. 体温測定 <br>
E. 血 圧 <br>
5 身体計測 <br>
A. 身体計測の概要 <br>
B. 身長測定 <br>
C. 体重測定 <br>
D. 頭囲測定 <br>
E. 泉門測定 <br>
F. 胸囲測定 <br>
G. 腹囲測定 <br>
6 プレパレーション <br>
A. プレパレーションに関する基礎知識 <br>
B. 発達段階別のプレパレーションのポイント <br>
C. 特別に配慮を要する子どものプレパレーション <br>
第[章 検査・処置技術 <br>
1 採 血 <br>
2 採尿・導尿 <br>
3 咽頭・鼻腔培養 <br>
4 骨髄穿刺・腰椎穿刺 <br>
A. 骨髄穿刺 <br>
B. 腰椎穿刺 <br>
5 与 薬 <br>
A. 経口与薬 <br>
B. 坐 薬 <br>
C. 注 射 <br>
D. 輸液管理・輸血 <br>
E. 点 眼 <br>
F. 吸 入 <br>
6 吸 引 <br>
A. 鼻腔・口腔吸引 <br>
B. 気管内吸引 <br>
7 酸素療法 <br>
8 抑 制 <br>
第\章 日常生活援助技術 <br>
1 食事の援助技術@ <br>
2 食事の援助技術A―経管栄養 <br>
3 清潔・衣生活の援助技術 <br>
4 排泄の援助技術 <br>
5 呼吸の援助技術―先天的な障害や病気により特別なニーズのある子ども <br>
6 移動の援助技術 <br>
第]章 救急救命処置技術 <br>
1 一次救命処置 <br>
A. 一次救命処置に関する基礎知識 <br>
B. 気道確保,胸骨圧迫,人工呼吸,AED <br>
2 二次救命処置 <br>
練習問題 解答と解説 <br>
索 引 <br>